お子様が「歯が痛い」と訴えた場合の原因と治療について

1・むし歯 

むし歯により歯が溶け、隣接面(歯と歯の間)に穴が開いて食べ物が詰まることにより、食べ物が食い込んだ歯茎が炎症を起こし痛むパターンが最も多いと思われます。

しかしむし歯が深くなり、歯の一番表層にあるエナメル質が剥がれてその下の層の象牙質が露出した場合、その象牙質が食べ物に刺激されて痛みが出る場合もあります。

隣接面の虫歯は食べ物が挟まっているとよく分からないのでご家庭では発見しづらいと思われます。

むし歯を削る道具で取り除き、詰め物をする治療が必要になりますが、小さいお子様で治療を怖がり、まだ削る治療が難しい場合はむし歯でできた穴を鎮痛効果のあるセメントで埋めて食べ物が入らないようにすればひとまず痛みは治まります。

治療の練習を行い、医院の雰囲気や機械の音、振動等に慣れて治療が可能と判断されれば後日治療を行う形をとらせて頂いている事が多いです。 

2・歯の生え変わり

子どもの歯の生え変わりが近い場合、ぐらついている子どもの歯が咬んだ時などに周りの歯茎を刺激するため炎症が起き、痛むことがあります。

歯のぐらつきが大きければ歯を抜く処置が適切であると思われますが、必要に応じレントゲンを撮影し、抜歯についての説明を行います。

また、6歳頃上下左右の一番奥に生えてくる6歳臼歯という大人の歯があります。

この歯は子どもの歯の後継で生えてくる歯ではなく、歯茎を突き破って生えてくるまでに時間がかかります。

この6歳臼歯の周りの歯茎が歯に圧迫されたり、歯磨きがしにくいため歯垢が溜まったりして歯茎が炎症を起こし、腫れると痛みが出ます。

また、腫れた歯茎に咬み合わせの相手の歯が咬んだ時に当たってしまい痛みが出ることもあります。

これは萌出性歯肉炎と呼ばれ、抗生物質のお薬を服用して頂くことがあります。

しかし6歳臼歯が生えるに従って症状は改善されますので、それ以上の治療は必要としない事が殆どです。 

3・口内炎

唇の裏や歯茎に口内炎ができて痛むこともあります。この場合は口の周りの筋肉を動かしたりした時の運動時痛、食べ物が当たった時の接触痛が主です。

1~2週間で自然に治りますが、痛みが強い場合は歯科用レーザーによる光照射や軟膏塗布といった治療を行います。

4・歯質欠損、エナメル質形成不全

むし歯ではないものの、生まれつき歯が欠けていたり、硬いものを咬んだり打撲により歯が欠けてしまってエナメル質の下の象牙質がむき出しになっていたりすると歯が歯ブラシの時や温度的な刺激でしみる場合があります。

エナメル質形成不全症といってエナメル質の発育が生まれつき未熟な歯も、エナメル質が薄く象牙質に刺激が伝わりやすいため同様の症状を呈することがあります。

必要に応じ詰め物やコーティング剤を塗布する処置をしたり、フッ素塗布で歯質強化をし経過観察を行う場合があります。

5・歯ぎしり

睡眠時などに歯ぎしりをするお子様は非常に多いです。

歯ぎしりをすることで顎に刺激を与えて骨を成長させたり、咬み合わせの強い部分を擦り減らし、咬み合わせの弱い部分を咬めるようにするなど、咬み合わせのバランスをとっているといわれています。

なので病的な意義は少なく、歯ぎしりをすることで特定の歯に負荷がかかると痛みとして認識することがあるものの、一過性で治療を必要としない事が多いです。

6・その他の疾患

中耳炎による頬や耳の辺りの痛みを歯の痛みとして訴えたり、副鼻腔炎により鼻が詰まったりすると、副鼻腔に近い上の歯が痛いと訴えることもあります。

歯に異常が認められない場合は他の診療科の受診をお勧めする事があります。